鯨と羊とおおいなる猫

草を食むように、文字をならべます

ケサランパサランの飼育箱

いる!ケ・セランパサランが。

斜陽が光を込める台所に。

泥酔と快晴の顔がまざった朝のクラスルームに。

猫の鳴いた暗い砂利道のはずれに。

 

桐の箱におびきよせる。

息が死んでしまわないよう小さな穴をあける。

そうして餌にはおしろいをあたえるべし。

 

ケサランパサランが飛んでいる。

奢侈品である聖水を注いだグラスの隣。

白衣の苦悩と薬品の臭いが満たす空ビーカー。

蚕の亡骸を葬る絹の棺に。

 

ケサランパサランが。花の種子でなく、動物の胆石でない。

それは妖怪であった。